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ひっそりと

いろいろ思うところをつらつらとつれづれに書いてみようかと。Qka_hsrt☆yahoo.co.jp

社長の犬

※オチのない思い出話です。

 

父はかつて小さな会社に勤めていた。社長とデスク同士も家族同士も距離の近いような。

 

私の子供の頃は好景気だったらしく、社長は成金を絵にかいたような風貌をしており、羽振りが良かった。子供が3人おり、犬を飼っていた。犬は雑種で気性の荒い顔つきと鳴き声をしていて、「クリ」と名付けられていた。社長の奥さんがクリに餌を与えてるところを数度見たのだが、生のひき肉に生卵を入れて社長の奥さんが手で捏ね、「クリー、クリー」と呼びながらそれを手から食べさせていた。ひき肉はとても赤かったので牛肉だったと思われる。

奥さんが手で生肉を混ぜる音がグチョグチョと聞こえてきて気色が悪かった。何とも気味の悪いものを食べさせるのだな、と思っている私の傍らで私の母は「あんな雑種に肉なんかあげてもったいない」と毒づいていた。雑種には良いものを与えるべきでない、と。そこのところは別に好きにすれば良いだろうけれど、生肉と生卵を手で混ぜる必要があったのか、しかも人前で、とは思う。キッチンでやってこいよ、と。

 

クリは小さな私を馬鹿にしていたようで、決まって私には歯を剥きだしにしてウーウー言っていた。憎たらしい顔だった。

 

父は数年後その会社を辞めた。そしてほどなくして会社は傾き、それと関係あるのかないのか社長は急死した。社長の奥さんは傾いた会社で少しの間頑張っていたらしいが、結局は倒産した。会社のあったところで奥さんはタコ焼き屋を営み始めたが、それも潰れた。父が会社を辞めてからのクリのことは知らないけれど、生肉はもうもらえていなかったのだろうと推察する。

 

今日の絵。クリ。記憶を頼りに描いてみた。

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